今回の「平成不況」は多くの中小専門店にとって致命的な打撃を与えた。客数が激減し慢性的な売り上げ不振におそわれた。十年近くも続いたので経営者が高齢だったり後継者がいない店では、先行きの不安から閉店廃業するところが多くなり、それは地方商店街で加速され「閉店します」の張り紙をしてシャッターを閉めた店が何軒も続く状況が急増した。いま不振気味の商店街に行くと全店舗の三割くらいが閉鎖したところが多く、なかには人通りが途絶えゴーストタウンのようになったところもある。
しかし見方を変えてみると、小売業には過去何年間も慢性的な店舗過剰が続いていた。それが今回の不況で一挙に解消する可能性がでてきた。商売の世界を長期的に見てくると、この不況を乗り切った少ない店だけが次の世代に生き残るのだと思う。
収入を失った人たちが生き延びるために商売の世界に飛び込んだ。何の経験もない人たちが商売の道を選んで店舗を持つことを許す環境が流通業界にあったので、まるで失業者の吹き溜まりのようなものだった。それがこの不況続きで「商売とは採算の取れないものだ。こんなに売れないようではやってられない」と思い込んだのであろう次々と店を閉めていったのだ。
だが本気で商売をやろうとするお店がこの不況で店を閉めるようになってはいけない。売れないのはどこも同じだ、採算割れの難関を切り抜ける特効薬はない。赤字分を経営者の個人財産でおぎなってでも細々と店を続けていくしかあるまい。もし儲けだけを先行する店なら一刻も早く閉店に踏み切ることがよい。
これからも生き残っていける店には「この商売が好き、扱っている商品が好き、おなじ好き仲間のお得意客が大好き」という精神がバックポーンになっていなければいけない。好きな道ならどんな苦境にも耐えていける。
この不況の打開には「客の多い立地に移動せよ」とか「不景気なときには高い商品は売れない、価格を安くして戦え」とか「大資本の大型店には勝てない、弱小資本の店はナショナルチェーンに加盟しろ」などと言われているが、この不景気ではどの道も危険きわまりない打開策である。大借金をして方向転換をしても生き残れる保証はない。
好き仲間のお得意客を集結して売り上げを伸ばし、すでに景気回復の道を走っている店も多くある。問題は経営トップが自店の強さ弱さを認識し、その個性的な強さに集中した解決策を打ち出した店だけが生き残れるのだ。
この毎週土曜日「斬り捨てゴメン」の長期連載もこの五月一杯で終わる。中小専門店に「頑張れ」とエールを送りたいという思いが長期連載を可能にしたのだと思う。
この連載に毎回イラストを描き続けたのは筆者の長男であるが「洋服屋が好き」という専門店の基本だけは間違いなく引き継いだようである。
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