昔の「よく売れていた時代」はお客が売り場を効率よく流れることが主眼であった。入り口付近は広く取ってお客が入りやすくする。通路は広目にして大勢のお客が立ち止まらないで奥に進みやすく障害物は置かない。すべての売り場をお客が回遊してもらうことが一番の目的だった。
しかし現在の「売れない時代」になって、お客はどうやったら売り場に滞留するか、通路も狭くて先が見えにくい状態にして通り抜けるのを防ぐような仕掛けを各所に考えるようになっている。そのための豪華な椅子を置いたり、観葉植物の鉢を置いたりして歩く邪魔になる工夫をしている。
もちろん今でも大勢のお客を集める大型食品スーパーなどでは、通路を歩きやすくして大衆客の流れを重視する環境作りをしているところもあるが、そうすると客数は増加しても購買単価は低下することになる。
専門店の集まったショッピングセンターでは、曲線の通路をつくり見通しを悪くしたり、面白いワゴンの売り場を通路の真ん中に置いて、お客の流れを中断させる狭い場所をつくるところが多い。またいたる所に休憩用の椅子やテーブルを置き、買い物の途中で一服してもらう工夫をしている。
不景気が続く限りこうした売り場環境の変化は加速され、どうしたらお客が売り場へ遊びに来てくれるかを考えるようになった。大衆相手の大型店でさえもこの考え方が広まった結果、ファン客の多い中小専門店ではなお一層売り場環境を変化させる動きが強まっている。
たとえば店頭から店内を見たとき、量販店は商品のディスプレイや大量陳列の雰囲気が見えるが、専門店は店内の中央部分に豪華なテーブルや椅子が見え「ちょっと座ってみたいな」と思わせる店が増えている。また売り場全体から格好良い陳列や照明が見え隠れしており「何か面白い品があるのではないか」と思って入ってみたくなる。そこには売り場効率よりもその店独自のユニークな雰囲気づくりが重要視されている。
これは和風の料亭や西洋料理のレストランと同じで、料理のおいしさや値段の安さの前にお客をどうやってもてなすかで、独自の工夫をするのとよく似ている。もちろん大衆食堂の店内のように明るく清潔なだけの雰囲気の店もあるが、これでは食欲は満たすことは出来ても食事の楽しい雰囲気は感じられないのではなかろうか。
こうして見てくると、ほとんどの店の売り場が販売効率一本槍であるように思う。それを「売れない時代」に向けたお客の楽しみ重視の売り場に改装することが急務だ。「昔と違ってお客が売り場に入ってこなくなった」と感じている店は、売り場の環境の変化が急がれる。百貨店などで大改装して一挙にお客が増えたと報告されている店はこの環境変化が効率よく働いた店だと思う。あなたの店の売り場環境はどうだろうか。
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