海外物のセーターを主力にするあるエージェントの展示会に顔を出した。上質のラムウールの無地セーターが大量に展示してあった。色目はベーシックからドぎつい原色、淡いアースカラー、明るいパステルカラー、ショッキングなビビッドカラーなど、全部で五○色くらい、サイズもSからLLまで四段階のフル展開である。
毎年流行に流されるメーカーが多くてお客の欲しがる色はどこのメーカーでも皆無ということが多かった。そこへ輸入物ではあるが基本色から変化色まで毎年すべて展開しているのを見て売りたい意欲が湧いてきた。
「じゃ売る自信の持てる色はSMLで各五枚、陳列に魅力を持たせる飾り色は各色MとLで二枚ずつで仕切ってくれませんか」と僕は提案した。
ところがそのエージェントのセールス担当者はこう言った。
「申し訳けありませんが、各色、各サイズとも一枚の受注にしてもらえませんか。常時追加体制をとっていますので、売れたらその色の番号をファックスしてください。すぐ発送しますから」と真顔で言うのだ。
さすがの僕も驚いたが、追加発送するといっても品切れが多くなって、とても売れたらすぐ発送という訳にはいかない。やはり売れ色は五枚くらいは売り場に積んでおかないと心配だ、と言う説明をしたら、僕は裏の倉庫へ連れて行かれた。
その倉庫には僕の選んだ売れ色は一棚全部にギッシリ詰め込んであり、他の変化色も各色三○枚から五○枚程度サイズ別に積んであり、その膨大な備蓄在庫には驚いてしまった。
その担当者は倉庫の隅に置いてある輸送用のパッキンケースを一枚引き出してきて組み立てた。その大きさはセーター一枚がビッタリ入るサイズである。一枚を輸送したのでは経費が掛かりすぎるのでは、と不思議に思った。
「ファックスで売れた色番号を知らせていただいたら、早速その番号のセーターを一枚運送手配します。ですからお店では売れた色は一日だけは品切れしますが翌日は入荷しますので陳列の魅力がなくなることはありません。
もし資金に余裕があるのでしたら一色を多くするのではなく発注する色数を増やしていただけませんか。そうすることによってお取り引き願う小売店さんの在庫を減らし、このセーター全体の陳列面積を増やすことにつながります」
僕は在庫の状況を見て話しを聞き輸送用の一枚箱を手に持ってみて、心から納得した。この取引き形態は流通在庫を減す効果がある。本当に売れたらすぐ補充してくれるのなら、小売店が在庫を抱えることはない。在庫の資金繰りで困るよりも、売って売って売りまくることに集中できる。
考えてみると、アパレル各社は展示会で小売店に在庫を積ませることに懸命になっているが、業界全体ではその流通在庫が期末にたくさんの不良在庫を発生させているのではなかろうか。
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