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2003/4/19

シカを野生に戻さない商売も自由なのだろうか

2003-04-19  安芸の宮島は僕の家からJRの電車で十五分くらいのところにある。今年は冬から春にかけてよく宮島に行ったのだが、この島には昔からやさしい目をした愛らしいシカが人間と共存してきた。
 僕が子供のときは野生のシカや猿が厳島神社の参道や商店街にたくさいて参拝客に食べ物をねだっていた。シカの餌はいたるところで売っていて、それを取ろうとして角を切った頭で子供を押したり、持っている袋をくわえて逃げるいたずらをしていた。
 だがその後「シカや猿は野生に戻そう」という運動が進んで街中では見かけなくなっていたのだが、ここ数年の間に再びシカが街中に出没するようになった。船着き場や街角には「シカに餌を与えないでください」と大きく書いてあるが、観光客が面白いからと餌を与えているのだと思う。
 先日「宮島の雛めぐり」の催しに参加して宮島に渡ったら、なんと船着き場の前の広場でシカの餌を売っているおじさんがいるのだ。「シカを野生に戻そう」という運動以来、宮島ではシカの餌を売る店は一軒もなかったのだが、その運動を無視して餌を売る店が出来たのだ。
 案の定、たくさんのシカが集まって昔のように観光客に群がり餌をねだっている。何年もかけて野生に戻す努力をしてきたのに残念なことだと思う。町役場の意見では「商売を禁止するわけにもいかない」と及び腰である。
 しかし僕の目の前で大きなシカがお菓子の入っていたビニールの袋を食べているのを目撃した。急いで袋の端を持って口から引っ張り出したが、こんなビニールを食べているとシカの命に関わるのではないかと思う。
 日本は民主主義の国であるから商売は法に触れない限り何を売ろうと自由である、と言えるのだろうか。その商売が環境を汚染し、誰かが困るような場合、それをやめさせるのも民主主義ではあるまいか。宮島もシカに餌を与えることを禁止する条例を作るしかあるまい。
 それにしても日本のアパレルメーカーは製造原価を安くするために中国やアセアン諸国で製造する道を選んでしまった。そのために長い歴史と高度な技術のある下請け加工場に仕事を出さなくなって、どこも倒産の憂き目にあっている。
 宮島のシカと同じで自社が生き残るためには野生のシカが少々死んでも仕方かないと考える店が餌を売りはじめた。同じように自社が生き残るためには、日本の下請け加工業者の技術がなくなっても仕方がないと考えるのだうか。
 何故、日本の技術を生かして少々値段が高くても売れる商品を作らないのか。製造をすべて国外に持っていくようなことをしていると、いずれ日本は伝統の技術の商品を作れない国になってしまうだろう。宮島のシカを野生に戻そうとするような動きは日本のアパレルにはないのだろうか。


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