九州のある店を臨店指導したときの話だ。その店は品揃えをシルバー層の女性に絞り込み価格帯が安さを感じるものに変えて、道路にはみ出るような陳列で大量に商品を積み上げ、それが大当たりでよく売れていたのだが、どういう訳か急にばったりと売れなくなった。
僕は午前中にその店の前に立ってしばらく観察することにした。しかしお客があまり来ないのである。店頭には年輩の販売員が一人と後は若い販売員が三人ほどいたが、その年輩の販売員が店頭をうろうろしており、お客が商品を見ようとして立ち止まると一番先に声を掛けている。
「お客さん、そのコートいいわねぇどこで買ったの。でもお客さんにはちょと派手ね。こっちのコートの方がもっといいよ。買っときなよ。あれ、買わないで逃げるのかね」と親しげに会話を交わす。しかしその内容が良くない。気の弱いお客だったら二度と来なくなるだろう。
店長にその年輩の販売員のことを聞いてみたら、古くからいる販売員で熱心なのだがちょと口が悪いらしい。でもそれが気に入るお客もいてファン客も多いのだと言う。店頭に出て一見客に接客するようになったのは最近のことらしい。
僕は店長にその年輩の販売員の接客応対が売れなくなった原因の一つであると説明した。古い常連客には心安い口調で会話をしても誤解されることはないが、店頭の一見客にそれをやると驚いて逃げ出す。シルバーのお客はグループ化しているので、その中の一人に気分を悪くされると何人ものお客を失うことになる。それが急にお客が少なくなった原因の一つだ。
もう一つの原因はもっと深刻で、店長がほとんど店に居なくなったのが原因である。以前は店長が店頭に出て一見客と応対していた。そのため品切れを見付けてそれを仕入れることも早いし、売れ方が鈍いとすぐ値下げしてその品を一番前に陳列していた。そうした商品の動きの早さがこのタイプの店には必要なのである。
ところがいまの店長は視察と称して遠くから来る同業の店長との応対に時間を取られている。話を聞くと仕入れ先の問屋が「この売れないときに猛烈に売れている店がある。紹介するから店長に会って話を聞いてみたらどうだい」と熱心に紹介しているらしい。その結果、近所の喫茶店で話し込み何時間も店を留守にすることになる。
スタートを切った頃は店頭で荷受けしてすぐその商品を陳列することが出来たが、売れ始めてからは商品量が増えて店の奥で店長一人が荷受けし売価を決めて札付けをしている。そのためほとんど店長は店頭に出ていない。その代わりに年輩の販売員が店頭に出始めたのである。
店頭での品切れの把握と人気のある商品の確認が出来なくなることは致命傷である。急に売れなくなったのはこの二つが原因ではなかろうか。
|