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まえがきから
「売れないからお店を開けていても面白くないんです。だから店をやめようと思っているんです」と言ってきかない女店主がいた。
「面白い、面白くないって、商売なんてそんなものじゃない。君は考え違いしてるんじゃないか」と説得しかけたが、その人にとっては面白くないことは、商売をやめる重要なポイントなのだと気が付いた。
面白いと思って商売の世界に入ったのだから、面白くないくらいなら商売をやめるしかない。彼女にとって、これほど明快な答えはない。「主人はサラリーマンで、奥さんの楽しみがお店だったのだから、楽しくないなら店をやめるのが正解だ」と、私は返答した。
だが、こう不景気が続くと、この女店主でなくっても商売をやめたくなる商人がたくさん出るだろう。もともとマーケットは店舗過剰の状態が続いているのだから、やめたい人に商売をやめてもらうのは大歓迎だ。店が少し減らないと、全部の商店が共倒れになりかねない。
しかし、「いくら苦しくても商売をやめるつもりはない」という人もいる。「商売が好きなんだから、少しくらい面白くなくっても、商売をやめる気にはなれない」という人もいよう。そういう人のために、この本は役立つと思う。
これを書いた私が商売が好き、商売しかやることがない人間なのである。売場でお客と話をすることが楽しいのだ。売ることが好きで、売れると元気が出る。利益をあげることは、スポーツ感覚で取り組める。私の商売の基本は、店のシャッターを上げることに無情の喜びを感じるところにある。
この本の原稿は 「繊研新聞」 の長期連載 『藤田雄之助の斬り捨てゴメン』をベースに、新たに加筆し、テーマ別に再編集したものである。長期も長期、このシリーズが毎週土曜日の掲載で始まって十数年間、500回を超す最長期の連載である。その連載はすべて 「商売が好き、商売しかやることがない」人間が書いたものである。
「タネ切れ」 になることはない。
お読みいただけば分かることだが、書く口調は悪口めいているが、どこを取り上げても全編を通してみても、売り場が好き、商売が好きで統一されているがずだ。だから読んでいただいて「元気がでたよ」 と言われることが、筆者の一番喜ぶ言葉である。
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