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![]() 5ピースクルーソックスの話 FUJITAメンズU/マスター;藤田雄之助 |
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「東京で一人暮らししてるとねぇ。困るのが洗濯だょ。近くのコインランドリーを使うんだが、ソックスだけは汚れがひどいのでまとめて洗っても後が大変。右と左が合わない。一時間くらい悪戦苦闘するときもある」とボヤいたのは東京から帰ってきた客さんである。 この声を聞いて僕は考えた。もし洗うソックスが同じ色柄のソックスだったら、右も左もない。どれとどれを合わせても履ける。普段ばきに格好が良いも悪いもない。品質がいいものを、同じ柄で何足かまとめて売ることは出来ないだろうか。 このコンセプトで選ばれたのが、綿とポリウレタン混紡のクルーソックスである。メーカーが送ってくる五足入りの箱のまままとめて売るキャンペーン商品がスタートした。それから27年間同じ考え方で売り続けているのだから我ながら驚く。
価格と品質、どっちがどっち?
当時、綿のクルーソックスは一足五百円していたが、学生を始めスポーツ好きな若者が、汗をよく吸うし、全体がしまるのでずり落ちない、と愛用する人が多かった。それを五足組で千五百円で売れるようにメーカーに特注をかけた。 その後、物価の値上がりで千五百円で売ることが無理になってきた。そのとき、僕は考えた。 「商売なんだから、千五百円で売れる品質にすればいいのだが、この五足組は話が違う。品質を落としたんじゃ一人住まいの学生さんが困る。値段がいくら上がっても品質は変えないでいこう」と決断した。 その後1,800円になり、2,000円になり、ついに現在の5足組で2,400円になったが、その間、同じ色柄のものをはき続けている人が大勢いる。 「高校生のとき履き始めて、大学、就職、結婚、そして子供が出来て...。その子供が中学生になったとき親子で柄を変えることにしたが、考えてみると20年以上も同じ柄のソックスをはき続けているんだ。しかし、それを売り続けているメンズUさんも、かなり執念深い店だねぇ」と、感慨深かそうに言うお客さんもいる。 絶やさない伝統 このソックスは針数88本で編み立てたものだ。ソックスは丸編み機械でタテに編んでいくので、針の数で厚みや糸の密度が決まる。 いまは細いナイロンが発明されて100本以上の高速機械で編み上げる。柄もコンピュータで自動化され、価格も安くなった。しかし、肉厚の綿のクルーソックスは高速編み機を使うわけにいかない。機械も老朽化してきた。 「申し訳けないが、あの機械は生産効率が悪くて使わないので分解してしまった。もっと安いもので高級なソックスがあるから、それで我慢してもらえないか」とメーカーに言われたとき困った。 どうしても同じ品がいる、と言ったら「じゃ一度に3000足ほど作ってくれたら、もう一度機械を組み立てる」と言われた。 こんないきさつもあったりして5p.クルーソックスは継続されている。 頑固でも... 「何で同じ柄が5足なの。違うのと組み合わせて5足でもいいだろう」と言うお客さんがいる。 だが、この5足組ソックスは同じ色柄だから意味がある。分け売りはしないと説明した後「普段ばきはこれにしてください。デートに行くときなんかにはいちゃいけませんよ。それはこの格好いい1足1,000円のにしてください」と言う。 この世の中、なんでも世情に流されるとき、頑固に同じ考え方で売り続けるものがあってもいいんじゃないかと思っている。 |
| * 5ピースクルーソックスの話 * |
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