アラン探訪 そして英国へ

アラン探訪 そして英国へ 9
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第3章 想いを馳せていた街 ロンドン
あっぱれなり、英国人魂

 昨夜、ジェームスポンド張りの大活劇でヒースロー空港に到着した我々は、タクシーでホテルに向かいチェックインを済ませた。一行6人が行動を共にするのは、今夜が最後である。一人は翌27日に帰国、残りのうち3名は28日にドイツのミュヘンへ渡り、パリを経由して日本へ。増田氏と二人だけが30日のフライトまで、ここロンドンへ滞在する。
 そんな訳で今回のツアープランは、今夜をもって解散。帰国組の送別会と、きょうまでの労いを込めて、晩餐に興じる。
 たかが展示会と視察の旅だが、当事者の我々にとっては、よくぞ闘い抜いてきたという心境だ。アイルランドではギネスだったビールも、英国流儀でいくと生温いビター。グラスを掲げて乾杯し、一同、まずは御疲れ様である。
ロンドンの目抜き通り...ピカデリー
 明けて27日。
 ともかく土地勘を掴むため、ロンドンの繁華街を歩きまわる。それにしても今回の旅は、よく歩く。
 4日間を過ごすロイヤルトラファルガーディストルホテルは、ロンドンの中心地であるピカデリーサーカスから歩いてすぐの立地で便利が良い。
 隣りにはナショナルギャラリー(王立美術館)もあり、その名からして、さぞ立派なホテルであろうと楽しみにしていたのだが、何のことはない。ディストルホテルチェーンの一軒で、ランクは中。観光客向けのホテルであり日本人の宿泊も多い。宿泊費は安くないが、立地代と理解するしかない。
 ダブリンのパークレイコートはガイドブックにも載らない超高級ホテルで、こちらはこの有様。ガイドブックとは、大して役に立たない物ではある。

 さてロンドン。
 これまたガイドブックに紹介されるメインストリートには、結構な数の日本人が歩いている。ハロッズをはじめ紅茶で有名なフォトナム&メイソン、リバティ、シンプソン、ダンヒル、オースチンリード...おおよそ名前の知れた店で買い物をする日本人は、その買い方をして豪快と言わざるを得ない。
 品物の前に立ち、はばかることなく財布を広げ、金銭とカードの勘定。店員を呼付けたと思ったら、接客の間もなく大量の買い付けが始まる。まるでバッタ屋の買付のような行動である。もちろん全てとは言わないが、少なくともこうしているのは黒髪の日本人だけである。
 しかし面白いもので、ガイドブックに載っていない通りに入ると、まったくと言えるほど日本人の姿は見えない。そこに軒を連ねるのは、大きくならなかった(なれなかったのではない)ロンドンのアッバークラスを支える老舗の専門店だ。
 それらの店構えは排他的にさえ映る、簡単にいえば入りにくい店で、20坪前後の店内は半間の重い扉で往来と隔てている。
 扱う商品も専門を極め、背広屋はシャツを売ろうとしないし、シャツ屋はニットを売らない。その代わり自分の専門に関しては、膨大な知識とそれに裏付けられた自信を持って接客に応じる。帽子が欲しけりゃ帽子屋へ行けという訳である。
 こんなところに英国的個人主義が現れ、それぞれの店のディスプレイや店構え、接客から、独特の信念やこだわりが伝り、とても興味深い。
 しかし斜陽と言われて久しい英国経済の中で、これら極めつけの保守的な専門店は、冬のバーゲンの真最中というにもかかわらず、世辞にも繁盛とは言い難い貧況である。自らの専門分野にのみ磨きをかけ、英国人のプライドだけで商売を続けている彼らの姿には、同情さえ抱いてしまう。

セビルロウst.の仕立屋ハンツマン  こうした専門店がひしめき合う通りは、リージェントストリートとボンドストリートに挟まれた、セビルロウストリートが代表する。「背広」の語源にもなった、仕立服や誂え屋が軒を並べる通り。いまひとつは、ピカデリーの南側の筋、ジャーミンストリートで、こちらは差詰め「男の嗜み通り」とでも呼べる通りである。仕立てシャツ屋、誂え帽子屋、誂え靴屋、その他にもバッジ&ボタン、グルーミング用品、チーズ、香水…と、その専門は多岐にわたる。

 フォトナム&メイソンでアフタヌーンティ。ここは食品出身の百貨店で、いまは衣料なども扱う老舗デパートだ。ジャーミンストリートに面した裏口から入り、初老のウェイターに二人であることを告げ、さほど広くないテーブルへ案内される。店内は忙しそうだ。
 メニューはフィンガーサンド、スコーン、ミニサラダ、ケーキ、ティ、で6.50ポンド(\1,500)。決して安いわけではない。
 内容は昨今の三越などのティルームにそっくり、味も同様、しかしサーヴィスにあたる初老のウェイターは立派だ。ここに限らず老舗の多くの販売スタッフは、みな年配の紳士である。それぞれの道のエキスパートを感じさせるに充分な誇りを持って従事している。
 若いアルバイト風の従業員がいるのは、チェーン店のピザ屋とマクドナルドだけなのだ。



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