アラン探訪 そして英国へ

アラン探訪 そして英国へ 5
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第2章 岩と風が司るアラン諸島
絶句、エア・アランで飛ぶ

朝のヒューストン駅  1月24日、午前6時。ベッドの中で目を覚ます。
 窓の分厚いカーテンを開けてみるが、外が明るくなるにはまだ1時間以上もかかる。今日はアランスェターのルーツを辿り、ゴルヴェイ湾の沖に浮かぶアラン諸島へ渡る一日の始まりだ。
 ホテルをチェックアウト。島へ滞在する3日分の荷物だけを持ち、大きな鞄はホテルのクロークへ預け、ローリーと待ち合わせたヒューストン駅へ向かった。
 ヒューストン駅は、アイリッシュレール(アイルランド国鉄)のれっきとした起点駅である。しかし、それにしては小さい。
 プラットホームに停車する6両ほどの列車のほとんどが禁煙車両。唯一の喫煙可能な車両を見つけ乗り込むと、全席4人掛のボックス座席には、日本の食堂車よりも大きなテーブルが据え付けてあった。
 我々が乗り込んだのは特急といえる列車で、普通列車と格差があるのか否か知れないが、まずはゴルウェイの街までの3時間は快適な旅ができそうである。この後に予定しているアイリッシュプレックファストがいまから楽しみだ。

 午前7時30分、定刻に発車。一息を入れ、食堂車へ移動すると多くスーツ姿のビジネスマンが乗り込んでいる。それは日本の新幹線の車内と同じ雰囲気で、アイルランドの主要な交通手段ということが窺い知れる。
 運ばれてきたフルアイリッシュブレックファストは、ホテルと同じようなメニュー。フレーク、ミルク、ジュース、パン、トースト、ハムエッグ、サラダにティ。これで4.95ポンド(\1,000)ならリーズナブルだろう。
 食事を終えるころには太陽もしっかり上がり、窓の景色はどこまでも平地が続く単調なものに変わっている。昨日のモナハン行きは、北へ北へと山岳地に向かって移動したので起伏の多い丘陵地帯だったが、きょうのゴルヴェイは西の端。東岸ダブリンの街から、南アイルランドの国土を東西に横切るルートで、地形と生活様式の違いがよく解って興味深い。 ゴルベイの街

 昼より少し早く着いたゴルヴェイでは、アラン諸島へ飛ぶエアアランの搭乗申込みを済ませ、昼食の後1時間ほど散策。
「ゴルヴェイは何もない田舎の漁師街」と聞いていたが、飛んでもない。真新しいショッピングセンターはあるし、中心部の目抜き通りには若者が溢れている。教会の隣の近代的な建物がエアアランの事務所。そこから20分、郊外の海に近い空港までは、送迎専用のマイクロバスが用意してあった。

なんと、これがアラン行きの双発機!  閑散とした空港には、エアアランのグリーンと白に塗り分けられたパトロール機のような双発機が、ただポツリと停めてあるだけである。
 搭乗手続き。
 ひとりずつ名前を告げ、チケットを手渡す。航空会社のおばさんは、何のために置いてあるのか解らなかったカウンター横の大きな体重計へ乗るよう、当然のような顔つきで促す。そうして人間と荷物を交互に計り、電卓で足し算をしているではないか。さらに体重を考慮した座席を我ら乗客へ指示している。なんたることだ! とにかく狭い!
 ヨタヨタとまったく頼りなく滑走路に出た双発機は、パイロットが我々の方を振り向き、一言なにかを告げた後、いとも呆気なく飛び発った。それは飛行機の離陸というより、トラックの運ちゃんが「ホイ、いくぞ」と声をかけた調子の、まことに簡略的なテイクオフである。
 想像に違わず機内は酷く狭い。パイロットを含めて定員は10名。膝は前席のシートバックに、両肩は窓と隣に座った人へそれぞれ押付けられ、頭上もまた然り。長身のローリーは首を折り曲げ、空間と呼べるのは顔面の前だけ。さらにコクビットは丸見えで、その気になれば計器に触ることさえできる状況である。
 風に煽られようものなら、揺れるというより蛇行すると表したほうがよろしい。不安定なラジコン飛行機に乗ったら、こんな感覚なのだろうか...。
 ゴルヴェイ湾の上空100フィートを飛び、15分も経たないうちにアラン諸島は見えてきた。



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