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競馬といったって、さほどのキャリアがあるでもない。ただ走るためだけに生まれてきた競走馬の宿命に惹かれ、「がんばれ、がんばれ」と勝てないサラブレッドを応援したくて馬券を買っている程度に過ぎないのだけれど、毎週末の中央競馬から目が離せないのである。人気の薄い馬が一等賞を獲れば、それだけ高い配当がつく。万馬券という心地よい響きもまた競馬ファンを魅了してやまないのだろう。
ビギナーズラックというケースが、なぜか競馬には多い。広島のウィンズへ連れていった女の子が、欲も衒い(てらい)もなく「私の誕生日だもん!」とか抜かして買った...いや失敬、とか仰せて買われた馬券が100倍になったこともあった。まったく忌々しい...いや失敬、まったく羨ましい幸運である。しかしそんな彼女も競馬新聞を片手に一人前の予想を始めると、これが当たらない。はっはっは、ザマミロ。
一年を通して開催される競馬に一喜一憂していた近年だったが、深夜にまで及ぶハードな業務ではロクすっぽ予想をする時間もなく、ここ半年はすっかり無沙汰を決め込んでいた。投げやりな馬券では丸で当たらないのだ。いわんや万馬券なんぞ、今年の正月明けに落手して以来、とんと遠ざかっていて、元金さえも回収がつかないのだった(情けない)。
しかし、そうこうしている内に季節は晩夏を迎え、小倉名物の夏競馬も、いよいよ終わりが近づいた。
そんな折り、馬仲間の一人が毎年の小倉詣でに誘ってくれた先週末なのだった。なにしろ9月も上旬を過ぎると、俄然と忙しくなる。洋服屋にクリスマス屋、ウェブまりふと、その他のホームページ----夏の間、暢気に過ごしていた各分野が一斉に動き始めることは判っている。それまでに一度、心ゆくまで馬と遊んでやろうと企てた夏競馬な週末なのである。
小倉競馬場へ到着。
指定席へ陣取り、久しぶりに赤ペンを握りしめ、競馬新聞を睨み付ける。日頃の仕事のことなどを忘れ、なかなか気分の良い感覚だ。
朝から生ビールでもって乾杯するや、パドックへ駆け寄り美しい出走馬を眺める。第1レース、3歳未勝利戦。時速70キロにも達して激走するサラブレッドにしては、厩務員のおじさんに甘える仕草がなんとも可愛らしい。400キロを優に超える馬体とは言え、まだあどけない幼さが残る顔つきに目を奪われる。歩様を確かめ、馬体の艶を見ては、走りそうな馬を探す束の間。ま、少なくとも、あの眠そうな顔つきの1頭は買う必要も無いに違いない...。
間もなく発走。
いましがた眠そうにしていたフジタカローズが1着。配当69倍。ハズレ。おのれ、素人の選択眼など役にも立たぬわ。
ぬ〜...第2レース。今度は好位に取りついたオペラセブンがが抜け出して1着。配当77倍。的中! ガハハ、高配当馬券の真骨頂とはこの感じなのだよ。ん(!?)、あ、いや、競馬とは美しいサラブレッドの魅力に云々。
一進一退の午前中を過ごし、午後。
お目当ての人気薄馬ココロ号の出走である。走っても走っても二桁着順。かれこれ2年も勝てない哀愁の競走馬だ。その第7レース。荒れると踏んだダート競走で遂に117倍をブチ当ててやった。もはや笑いが止まらない。嗚呼、競馬のいと面白きかな。
かくして夏競馬を存分に愉しんで小倉の夏が終わった。
なに、収支が気になると? 日頃、博打なんぞしたこともない者が欲にかいてパチンコなどに立ち寄ったので、そちらで大敗。競馬の上がりで元金まで戻したに過ぎない、哀れな小倉詣でなのであった。ばくちの才能に劣る者の悲哀たるや...商売人が楽して儲けようなど、もってのほかだ。
はい、今日からマジメに仕事します。ごめんなさい。
* 夏競馬な週末 *