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万馬券と夢人


 うっうっう、なんとも心地よい響きの言葉ではないか「万馬券」。マンだ、ゥマン!...100円が10,000円に化ける馬券。思わず唇が力んでしまう素晴らしい馬券なのだ。
 古今東西、競馬には穴党と呼ばれる族がある。常に人気薄の馬に狙いを定め、大きな配当に期待する夢多き人種。

 さて、競馬には様々な格がある。若駒が競走馬としてデビューを飾る新馬に始まり、獲得本賞金の金額に応じて500万円条件、1600万円条件。各々のクラスで1着入線をしてオープン格の仲間入りを果たす。力の拮抗した馬を集めて競走をしているのである。
 これを条件競走と呼び、スポンサーの付かない競走を平場(ひらば)と名付けて分類をする。専ら勝ちあがれない古馬がそこにはわんさかと集い、今度こそはクラス突破と願いを込めゴール板を目指す。
 でどころは不確かではあるが、様々な競馬データによると万馬券は、午後の平場条件から準オープンの特別競走...すなわち7R〜10Rで顕著に飛び出すと言う。さらに、喫茶店で拝読したスポーツ新聞のコラムは、「古馬混合1600万条件」の競走が大波乱の坩堝(るつぼ)と説く。
サーストンフライト@15番馬  年間120レースを超える重賞の馬券をすべて買うことが決まりの重賞バトルを楽しむ傍らで、指をくわえて美味しい条件戦を見逃しておく手は無い。せめて重賞の馬券代だけでも稼ぎ出せぬものかと思案を重ね、競馬新聞の隅々を読み尽くすのである----競馬新聞はそれくらい読まねば高く付いて仕方ない----尤も、読んだからといって必ずしも的中しない。(爆)
 かくして競馬が催される前夜はおおいに忙しい。
 手当たり次第に馬券を買ったのでは瞬く間に資金は底をつくから、まずは波乱要素を含んだ競走に目星を付け、人気の薄い馬を物色することから始める。
 競馬とは不思議なモノで、下馬評の文字通り、上位人気の馬がすべて連対を外すケースは極めて少ない。二桁人気以下同士の決着は希有な傾向なのである。動物が駆け回るのに不可解なことではあるけれど、馬連の馬券を買う者にとってはありがたい傾向で、要するに一発を秘めたヘボ馬を捕まえ、それから人気サイド(あるいは実績上位馬)に向けて買えば良いワケだ。1着か2着かさえ論ずる必要が無い。
 第1回京都6日目、第10競走、古馬1600万条件「寿ステークス」。芝1800mのハンデ戦である。
 単騎で運べそうな2番アストラルブレイズが53kgで内枠に入る。単勝12番人気の如何にも穴を空けそうな役どころだが、鞍上はスタートがヘタクソな菅谷君だ...これは脆い。しからば、1600万へ入るもなかなか芽が出ない15番サーストンフライトはどうだ。かつての重賞で推したこともあるこの馬は、ここでの単勝が11番人気。しかし好感度の高い秋山君なら好位の競馬ができる。
 結果。手応え好く4角から先頭に並び掛けた秋山君は、まんまと直線を先頭に立ったまま押し切った。ゴール前の混戦で2着を争ったのは2番人気のトウカイパルサーと、6番人気のキングジーニ。幸運にもハナ差を制し連に絡んだのは後者なのであった。馬連7−15 ¥17,720、どっかーん!
 金杯の日に全12レースで負けまくった貸しを、好きな馬に利息付きで返して貰った。かっかっか。
 思うに、夢をかけた馬券は当たっても、欲とつれづれの万馬券はほとんど当たらない。
 左様、穴党とは赤字を思い知りつつ、その言葉の響きに夢を託してしまう人の性の現れなのだろう。
 今年も競馬が始まった。




* 万馬券と夢人 *