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ラガーレグルス


 陰暦5月を称して皐月と申す。
 自然界では若葉が躍動的な息吹を帯びて萌え、雪代はすっかり春の温度を取り戻す目出度い季節である。人は何気なく明るくふるまい、動物も季節の訪れを知って嬉々と駆け回るのだ...動物も。
 公営賭博とは聞こえのよろしくない文句だけれども、サラブレッドがしのぎを削る競馬は、いよいよクラシック戦線を迎えた。
 サイコーキララが馬群に沈んだ波乱の桜花賞で4歳牝馬のマイル女王が決定し、さても牡馬の第一冠、皐月賞の開催である。
 番組改編も甚だしい今年の中央競馬だが、それでも出走各馬は誉れ高い皐月賞馬の栄冠を目指して、余念のない調整で中山競馬場へ臨んだ。直前の追い日になり、有力候補のフサイチゼノンが骨膜炎の疑いで出走回避。そのニュースを、東京出張から帰る新幹線のスポーツ新聞で知ったのである。
 おう、そんなら面白い! 俄然やる気がまきおこり、競馬新聞に集中するのだった。

 さて、第60回皐月賞。天候は晴れ。JRAから良場馬の発表である。
 クックック...1番人気はここまで4連勝中のダイタクリーヴァ、2番人気は武君のエアシャカール、クックック...誰もみな忘れているだろう、ラガーレグルスが暮れの「ラジオたんぱ杯」で突き抜けた事実を。あれは阪神の2000mなのだ。イレ込んで出遅れた前々走「共同通信杯」ですっかり人気を落とし、前走の「弥生賞」も届かず3着。しかしゲート難は解消され、鞍上の佐藤君とは息もピッタリ。クックック。
 ファンファーレの音ももどかしく、皐月賞の発走である。直前で3番人気のラガーレグルスを軸に、10点流し買い。これで的中したら如何にも格好良いではないか、ガハハ!

翌日の新聞です、、、トホホ 短波放送が軽妙に喋る。
 「各馬、ゲート入り完了----ガチャン!----スタートしましたぁ。おぉっと、1頭、立ち上がって出遅れ! 1番ラガーレグルスが出られません!!」
 ドッヒャ〜!
 短波放送は続けて平然と喋る。
 「さて各馬一団となって1コーナーへ向かいます。先行争いは...」
 おいおい、我が愛しのラガーレグルスはどこにおるんじゃい!
 短波放送の1分50秒後。
 「先頭はエアシャカール、先頭はエアシャカールか、ダイタクリーヴァか、外からジョウテンブレーブ、後方からチタニックオーもやって来た」
 ぐぉー、ラガーはどこじゃー! 内か、外か、何番手か、クソッ、教えろ!
 「先頭はエアシャカール、ダイタクリーヴァ、2頭並んでゴールイン!」
 ついぞラガーレグルスの名は呼ばれなかった。ぬぅ。
 間もなくゲートでの出来事が解説された。なんとラガーレグルスは立ち上がって騎手を振り落とした後、ゲートの中へ座り込んでしまったのだそうな。出走拒否。なんてこった。
 発走と同時...聞けばスターターの合図から0.4秒後にゲートは開かれる。もしもラガーの立ち上がりが0.5秒早かったら発走除外。しかしラガーは立ち上がり競走中止の決済。すなわちラガーレグルスから10点の流し馬券は、スタート合図から0.4秒でナンセンスな紙切れと化したのである。

 ところで一昨年の天皇賞(秋)、稀代の快足馬サイレンススズカが骨折で競走中止。同年の宝塚記念、メジロブライトがゲートで立ち上がり外枠発走の果て、さらに出遅れて惨敗。いちいち問題馬から流した馬連を買っているのは、いったい如何なる巡り合わせか。
 ついでに白状しよう。さる芝1600mオープン特別にて、コクトジュリアンと名乗る馬が1000mの通過タイム52秒という飛んでもない時計で激走した。マイルの前半で15馬身のブッチギリだ。はっはっは、こんな玉砕走法が通用するか、ボケ!
 左様に思いつつ、手中にあったコクトジュリアン流しの馬連馬券を恨めしく凝視していたのであった。
 春の盛りの動物競走だけれども...もーちょっと真面目にやってよ!

 でもね、ラガーレグルス君も鞍上の佐藤君も、怪我が無くて良かったッス。今度はダービーかな...出てきたら、もう一度買うからね。





* ラガーレグルス *