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アマチュア釣り師が渓魚を釣ること遊漁と呼ぶそうな。遊ぶと言ったって当方は真剣そのものなのだけれど、漁をして遊ぶとは言い得て妙である。
そして遊漁には、魚の産卵期を護り繁殖を促すための禁漁期間が設けられ、概ね秋から冬の間は渓へ立ち入ることが許されていない。春の雪代(ゆきしろ)が渓へ出るころ、禁漁は解かれ、釣り師が一斉に繰り出すのである。
それまでの間は、ただひたすら竿の手入れなんぞに勤しみ、来る解禁日を待ち焦がれる太公望の冬だ。
山女魚に魅せられ、出会うたびに渓の出来事を話し合う仲間がある。まだ知らぬ渓の話や穴場の話しなど、彼はマイナーな渓流釣りのことを良く知っていて、すっかり親しい釣り仲間となった。
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彼、シンゴ君がメンズUへシャツを買いにやって来た。
「ノブさん、あそこの支流を知ってますか?」
「え? あんな細い沢に山女魚なんか居るの?」
「それが居るんですよ! マジで...こんなアマゴが!!」
「へー!」
驚くばかりだ。
「よし、じゃ今シーズンの最大体長で師匠を決めようよ」
「いいッスよ」
「自己申告でデカイほうが勝ちね」
数年前、かくして師匠の争奪戦が始まった。
その年は春先の28cm 山女魚で師匠の称号をゲット。他愛ない師匠に違いないが、非常に気分がよろしい。なんたって師匠なのである。わっはっは!
が、翌年。
何が災いしたのか春先に多忙を極め、最も大物が出やすい時期を逸してしまった。
シンゴ君と言えば解禁前から虎視眈々と準備を重ね、3月の声を聞くやいなや一目散に渓へ飛び込んだ。しかも自動二輪の免許を所持していることを利して、渓流釣行にうってつけの125cc オフロードバイクまで入手していたのである。こういうのを鬼に金棒と言う...ぬ〜。
新しく竿まで購入して解禁日を待ち構えていたというのに、釣りへ行く時間が無い。なんてことだ。
シンゴ君ときたら尺を超える岩魚まで取り込み、まったく鼻息が荒い。こちらは幼魚だか成魚だか見分けもつかぬ小山女魚が辛うじて数尾。どうにもこうにも師匠の示しがつかないのである。
晩夏の抵抗も虚しく、その年のシーズンは手も足も出ない大敗。称号はシンゴ君の手によって剥奪されてしまった。出遅れは痛い。
今年こそはテンカラの名誉にかけて、是が非でも奪還せねばならぬ。
そのためには解禁前からの準備が肝要。まずテンカラ道具の手入れ。そして毛鈎。活きの良い鳥の羽根が何より必須なのだ。
すでに前哨戦は火蓋を切った。そして噂に聞けば、なんでも解禁前のシンゴ君は忙しいらしい。へっへっへ...。
#錦帯橋の御堀で鴨の羽根を拾う男を見たら、どうか、そっとしておいてやってください。
#それは私です。(爆)
* テンカラ前哨戦 *