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白ヘビ

 戦後、岩国駅前の復興を願って岩国まつりは始まった。市民の多幸、商売繁盛、様々な思いを馳せて数万人の人が駅前に繰り出す一日。駅前で暮らしていると毎年、秋になると祭りの話題が持ち出される。商店街のスタッフが総勢でお手伝いに出て、参加される方々、観衆と一緒になって終日を過ごすのである。
 とりわけ岩国の名物となっている「白ヘビ」の踊りは有名で、オスとメスの張り子のヘビを男女10名が担ぎ、お祭り広場を所狭しと踊って駆け回る。祭り半纏に足袋姿の担ぎ手は、この日、朝から白ヘビと過ごす一日を送るのである。
 午前10時。「景気づけに一杯」などと言いながら朝酒で始まる白ヘビ軍団は、半纏に着替えてすっかり祭りモードだ。近くの公園で直前のリハーサルなどをしながら、午後、今津町にある白ヘビ神社で神主さんからお払いを受ける。さかきの枝を白ヘビのアタマにくくりつけ、あとは本番を待つのみ。

わっしょい  白ヘビの演舞はしかしなかなか難しい。担ぎ手の面々が息を合わせ、走り、止まり、担ぎ棒を操るのである。
 商店街のスタッフが担ぐ白ヘビは、その半数以上は大手スーパーや銀行などに勤める白ヘビ未経験者で、はっは、これが鬼門。
 白ヘビの動きを司るのは、まず頭。号令に合わせて向きを変え、ヘビが歩くがごとく重い頭部を支えて上下させねばならない。他の担ぎ手に比べると数倍の体力を消耗するに違いない。
 頭と同じくらい重要な部位は尾だ。一見、ただついて行けば良いような尾は、だらだらと歩くと非常に恰好が悪い。いや、本人ではなくヘビの見てくれが貧しい。尾は尾なりに節度を持って対峙しなければならない。
 数ある白ヘビの演舞の中で、トグロを巻く機会は多い。白ヘビがトグロを巻き始めると尾は、頭と反対の方向へ走る。しかも、頭の動きが止まった後も走り続け、きれいな姿に整える役目を担う。尾は実に、頭の3倍の速度で3倍の距離を全力疾走するのだ、朝っぱらから酒を飲んで!

 白ヘビを優雅に見せるため、商店街スタッフはいきおい、重要な部位を持つ。
 毎年行われる岩国まつりも今年46回めを迎えた。駅前で暮らしている限り、担い手を任されるのは承知しているけれども、いやはや、いつまで体力が保てるやら。
 だれか若いの、替わってよっ!




* 白ヘビ *