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男の着こなしの中で、ベルトというアイテムはどうにも後回しにされてしまうようである。女のそれは、くびれた腰周りを強調するようにデザインが施され「サッシュ」などと呼んでいろいろな形へ素材──革や布ばかりでなく、金属の鎖やロープのような物まで──があって、見ているだけでもなかなか楽しいのである。
さて、スーツを着てもコットンパンツを穿いても、ベルトループがあれば使う男のベルトは、女物ほど多彩なデザインは無いとはいえ、やはり様々なバリエーションがある。洋服の着こなしを考えるとTPOに応じた使い分けは必要で、目に余るミスマッチは、せっかくのコーディネイトを台無しにもしてしまうのだ。
メンズの小物。ベルトは、その中でも代表的なアイテムと言えよう。
素材。
和装の世界において古くは「帯」とか「腰ひも」と呼ばれていた布だったが、洋装では革が主役となる。
男のベルトの歴史を紐解いてみると、そのルーツはファッションでなくむしろ実用から生み出された小物であることがわかる。生活の中で腰から道具を提げ、戦いの中でベルトに武具を備え、たちまち手にする物を吊すに格好の帯だったのだ。
必然的に丈夫な素材が望まれた。革や組み紐が相応しい素材として選ばれ、酷使に耐えるよう考案された。
組み紐は丈夫な綿や麻を太く紡いだ紐を幾重にも編み上げ、摩擦や引っ張りにも耐えられるよう作られた。前者、革は、牛を始めとして馬、豚など、やはり丈夫な素材が用いられた。
革素材を見ると、靴や鞄と同じような動物の名前が挙がっていることに気付く。そう、ベルトは男の服飾道具の中にあって、靴、鞄とならぶ3大革製品なのだ。
オイルを染みこませた「オイルドグローブレザー」、子牛の繊細な革「カーフ」や「キップ」などは一般的で、究極的には馬の尻革「コードヴァン」までが珍重される。色遣いも含めて、これらも靴や鞄と同じである。
柄。
組み紐を素材にしたベルトは、古くは戦の中で、現代ではクラブやチームの識別として、その部隊や団体によって考案され、様々な色柄がベルトに反映された。「アイビーベルト」とか「リボンベルト」と呼ばれる数色の色を組み合わせた柄は、レジメント(部隊)の識別としてネクタイの柄などにルーツをのばすレジメンタルストライプと同じ所以がある。
一方、革素材のベルトは、革が持つ本来の素材感がそのまま表された、機能的な美しさを尊重する。「カーフスキン」や「キップスキン」など子牛の革はには繊細な肌理(きめ)の細やかさがあり、「コードヴァン」は独特の光沢が極めて堅牢な美しさを魅せる。また牛の革に型押しを施し、一見、は虫類の皮革のように見せる素材もある。これらはデザインだけでなく、傷を目立たなくさせる目的や、曲げに対する柔軟性を補う効果もある。
こうしてルーツや素材を考えると、ベルトのTPOが浮き彫りになることがわかる。
戦いの中の識別として色づけがなされた柄のベルトは、総じてスポーティな着こなしにマッチする。すなわちチノパンやジーンズ、またウール素材のパンツを穿いても、スニーカーなどで着こなすカジュアルなシーンに最適と言える。反面、スーツやブレザーを着こなすビジネスシーンでは明らかに不釣り合いなベルトだ。
靴や鞄と目的を一にする革素材のベルトは、あらたまったスーツ姿、あるいは礼装まで、実用とデザインを併せ持つ小道具として、男の着こなしに無くてはならないアイテムとなる。しかも、可能な限り靴や鞄と同一の素材を、少なくとも色や素材感だけでも揃えてコーディネイトすることが肝要なのである。
腰に巻き付ければ何でも良いという代物ではないのだ。
そしてベルトには「バックル」と呼ばれる金具がある。ウェストのサイズを調節し、心地良くパンツを穿くための道具。本来は加工が簡単でいつまでも輝きを放つ真鍮(しんちゅう)の素材が用いられた。現代ではステンレスやメッキを施した物も見られる。
いずれもシンプルでクラシックな形、素材の「バックル」が望ましい。
たかがベルト、されどベルト。
朝、出かけるために洋服を着たとき、パンツのウェストループに通したままのベルトを見て──いや見向くこともなく無意識に使い倒してはいないだろうか。ファッションに目敏い女たちは、チラリと見えるウェストのベルトに目配せをし、その男の器量を量ることさえあるかも知れない(笑)。
洗練された素材とデザイン、きちんとコーディネートされたベルトを身につけることは、高価はスーツや腕時計を装うことよりも大切なことなのである。あなたは何本のベルトを使い分けているだろうか。
* ベルト *